略歴&思い出

きれいな手

私が新卒の頃、
白血病は、不治の病でした。

急性骨髄性白血病。

その病気は、つらい治療に耐えたあと、つかの間の平安が訪れます。

当時二人の患者さんがいて、
1人は20代、もう1人は30代。

20代の患者さんは、本当につらいときは荒れて、
物を投げつけてしまうこともあるくらい。
でも本当に、それほど、つらい治療だったのです。

そして、30代のその患者さんは、
普段から、とても穏やかで、
ナースも何かあると、ついその人と話したくなって訪床してしまうような、
そんな深みのある方でした。

今思えば、本当に若すぎる運命でした。

もう最期の時も近かったとき、
私は、その方の手を握りました。

きれいな手だ。
貴女はきれいな手をしてる。

そういって、握り返してくれました。

ただそれだけの言葉が、
今でも私の心に深く残っています。

何もできないことが、
悔しかった。

私は、ただ、じっと手を握っていました。
その方が眠るまで。

勤務が終わってからの時間でした。

深い深い眠りは、
それから数日後に訪れました。

2006年05月11日 14:39